代襲相続・数次相続
相続人が亡くなるタイミングと相続手続きが終わるによって、通常の相続、代襲相続、数次相続となり、後になるほど煩雑で難しくなります。ここでは代襲相続や数次相続がどのようなものか、簡単に説明した行きます。

代襲相続・数次相続

相続が始まると、被相続人(亡くなった方)の相続手続きが始まります。
相続人が誰になるかと言えば、被相続人の配偶者、子、親、兄弟などを思い出しますが、他にも孫や甥姪などが相続人になる事もあります。

 

では、こんな場合の相続人は誰になると思いますか?

 

例えば、相続が始まった時すでに相続人が亡くなっていたら、誰が相続人になると思いますか?
あるいは、相続手続きが終わる前に相続人が亡くなったら、誰が相続人になると思いますか?

 

実は、このような場合の相続には、それぞれ名前がついています。
相続が始まった時すでに相続人が亡くなっていた場合は「代襲相続」、相続手続きが終わる前に相続人が亡くなった場合は「数次相続」と言います。

 

では、「代襲相続」「数次相続」とはどんなものなのか、次に詳しく説明します。


代襲相続

代襲相続とは

代襲相続とは、相続人が先に亡くなって、後から被相続人が亡くなった状態での相続です。
代表的な例を時系列に書くと、次のような状況です。

  1. 先に子供が亡くなる
  2. 後から親が亡くなる
  3. 親の相続手続きが発生する

逆縁などとも言いますが、親より子供が先に亡くなっている状態で親の相続手続きを行う状態です。
他にも様々なパターンがありますが、被相続人より先に相続人が亡くなっている状態での相続を「代襲相続」と言います。

誰が相続人になる?

代襲相続になった場合、先に亡くなった子供に子(被相続人から見ると孫)がいれば、その子が相続人になります。
相続人である子供がいなければ孫、孫がいなければひ孫、ひ孫がいなければ玄孫・・・と続いていくのが代襲相続です。

 

もし亡くなった方に子供や孫がいなければ親が相続人になりますが、親がすでに亡くなっていたとしても、祖父母がいれば祖父母が相続人になります。
親の世代に対する代襲相続も、父母がいなければ祖父母、祖父母がいなければ曾祖父母・・・と続いていきます。

 

兄弟姉妹の場合は注意

被相続人に子供や親がなく、相続人が兄弟姉妹の場合は、代襲相続に注意してください。
子供や親が相続人の場合は世代が次々とつながって相続人になりますが、兄弟姉妹が相続人の場合は兄弟姉妹の子(甥姪)までで代襲相続はストップします。
甥姪が相続人だった場合、甥姪がすでに亡くなっていたとしても甥姪の子は相続人にはなりません。
相続人の子や孫のように、次々と世代を降りていくことはありませんので、注意してください。

 

子供の配偶者は相続人にならない

例えば子供が先に亡くなって、後から親が亡くなった場合の代襲相続を考えてみます。
元々、親の相続人は子供であって、子供の配偶者は相続人ではありません。それは子供が先に亡くなったとしても変わることはありません。
亡くなった子供の相続人としての立場を受け継ぐのは、直系血族である子供の子(被相続人から見ると孫)になります。

相続欠格や相続廃除でも代襲相続は発生する

これまでは相続人が亡くなったために発生する代襲相続でしたが、次はちょっと違う代襲相続の話です。
実は相続人が亡くなった以外の理由でも代襲相続が発生することがあります。
それが「相続欠格」「相続廃除」です。

 

相続欠格とは

相続欠格とは、民法第891条に規定されている不正行為や犯罪を行った相続人は、当然に相続人としての地位を失うという制度です。
その不正行為や犯罪を挙げると、次のようになります。

  1. 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
  2. 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
  3. 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
  4. 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
  5. 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

このような不正行為や犯罪を行った人は当然に相続人の地位を剥奪されますが、それでも相続の権利自体は残りますので、権利を引き継ぐための代襲相続が発生します。
仮に、親の遺言書を捨てた子供が相続欠格になったとしても、孫は代襲相続があるので相続人になることができます。

 

相続廃除とは

相続廃除とは、民法第892条に規定された行為を行った相続人に対して、被相続人が家庭裁判所に申立てることにより、相続人の地位を奪う事ができる制度です。
その行為を挙げると、次のようになります。

  1. 被相続人に対して虐待をし
  2. 若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき
  3. 又は推定相続人にその他の著しい非行があったとき

家庭裁判所への申立てだけではなく、遺言書に書き遺すことでも相続廃除ができます。
申し立てが家庭裁判所に認められれば、相続人の地位は剥奪されますが、相続欠格の時と同様に代襲相続は発生します。
仮に、親に虐待をした子供が相続廃除になったとしても、孫は代襲相続があるので相続人になることができます。

 

相続放棄したら代襲相続は発生しない

相続放棄は皆さんよくご存じと思います。
相続人の立場を自ら放棄する、という事ですね。
先ほどの相続欠格や相続廃除と違い、相続放棄の場合に代襲相続は発生しません
なぜでしょう?
相続放棄をした方は、その相続においては「最初から」相続人ではなかったことになります。
最初から相続人ではなかったという事は、最初から相続権は持っていなかったという事です。
相続権がないのですから、この相続に関して引き継ぐべき権利はありません。つまり代襲相続は発生し得ない、という事になります。
相続放棄と、相続欠格・相続廃除では、代襲相続に違いがありますので気を付けてくださいね。

数次相続

数次相続とは


数次相続は代襲相続とは違い、被相続人が亡くなってから相続人が亡くなる、と言う場合に発生します。
時系列で書くと、次のような状況です。

  1. 祖父が亡くなる
  2. 祖父の相続が終わる前に父が亡くなる
  3. 祖父の相続が始まる

これは祖父が亡くなった後に父が亡くなった場合、「祖父の」相続をどうするかという話です。

 

「ん?それって普通の相続では?」

 

と思いますよね。
亡くなる順番としては普通の相続なのですが、相続人(例で言えば父)が亡くなるタイミングが問題になります。
つまり、被相続人(例で言えば祖父)の相続手続きが終わる前に相続人(例で言えば父)が亡くなって、二人分の相続手続きを子が行うことを数次相続と言います。
※祖父の相続手続きが終わってから父が亡くなったのであれば、普通の相続ですね。

 

誰が相続人になる?

数次相続の場合、相続関係は複雑になりがちです。
これも例で見たほうが分かりやすいでしょう。
まず、祖父の相続を考えます。
祖父が亡くなって相続が発生すると、相続人は祖母と父(祖父の子供)になります。母と子は相続人ではありません。これはいいですよね。
次に父の相続を考えます。
父が亡くなって相続が発生すると、相続人は母と子供になります。これもいいですよね。
ではこれが間を置かず発生するとどうなるでしょう?
まず祖父が亡くなります。相続人は祖母と父(祖父の子供)ですね。そして祖父の相続が終わる前に父が亡くなります。父の相続人は母と子ですね。この時、亡くなった父は祖父の相続権を持っていました。母と子は父の相続財産や権利を引き継ぎますから、祖父の相続権も当然に引き継ぎます。つまり母と子も祖父の相続人になる、という事です。

 

数次相続は複雑になりがち

数次相続では、相続人になる人の組み合わせが数多くあります。
様々な組み合わせが考えられるため、ここではそのすべてを例示することはできませんが、ほとんど面識のない人達や見知らぬ人達が相続人になる事も珍しくありません。また世代を跨ぐことで相続人の人数が多くなることもあります。そのために数次相続では、相続人に連絡を取るのが大変だったり、遺産分割協議が難航したりすることがあるのです。
相続が発生した時の遺産分割協議自体は、いつまでにやらなければいけないと言った決まりはありません。
しかし相続が発生した時に遺産分割協議などの相続手続きを放置してしまうと、次々と数次相続が発生し、相続の権利関係が複雑になっていきます。
相続手続きは、できるだけ早く終わらせないと、後から大変な事になってしまいます。

まとめ

いかがでしょう。
相続人が亡くなるタイミングで、代襲相続や数次相続が発生する仕組み、わかりましたか?
普通の相続に比べて複雑になりがちな代襲相続や数次相続ですが、遺言書を残して頂く事で相続手続きは大変シンプルになります。
有効な遺言書があれば、遺言書の通りに相続手続きを行えばいいのですから。
もしご自身に代襲相続や数次相続の心配があるようでしたら、是非とも遺言書を残すことをお勧めします。