生涯未婚率は男性が約28%、女性が約17%と言われています。
また高齢化や核家族化が進み、配偶者と死別して一人暮らしになっている方も多くいらっしゃいます。
このように、最近の日本では「おひとりさま」が増え続けています。
おひとりさまでも親族と交流がある方もいらっしゃいますが、ご高齢で親族や身内がいなかったり、兄弟姉妹や甥・姪と交流が薄くなっていたりする状況であれば、ご自身が亡くなった後に残る遺産がどうなってしまうのか不安に思われる方もいらっしゃると思います。
そこで必要になるのが遺言書ですが、遺言書を作った場合と遺言書を作らなかった場合で、ご自身の遺産がどうなるかを考えてみたいと思います。
遺言書を作らなかった場合、まず相続財産を受け取るのは相続人になります。
おひとりさまの相続人は、子や孫、ご両親や兄弟姉妹などの他、前婚の子がいる場合はその子も相続人になります。
ご自身が高齢で兄弟姉妹が他界している場合、甥・姪が代襲相続人となって相続財産を受け取ることもあります。
普段から相続人と交流があれば、ご自身の遺産が相続人に渡っても問題無いのかもしれませんが、あまり交流がない相続人に遺産が渡ってしまうのは嫌だと思う方もいらっしゃるでしょう。
・・・俗に「笑う相続人」と言われるのは、交流のない相続人が突然相続財産の受取人になることを言うそうですが・・・
では相続人がいないおひとりさまの場合はどうなるでしょう。
その時は、相続財産は国庫に帰属することになります。
家庭裁判所が選任した相続財産管理人が、亡くなった方の財産を調べ、未払い金などの清算を行ったのち、民法九百五十九条の規定に従い遺産を国庫に帰属させます。
事実婚の関係にあった方や長年パートナーとして看護や介護を行ってきた方から「特別縁故者」としての請求があれば、その方が遺産を受け取ることもあるようです。
いずれにしろ、遺言書がなければ、大切な財産の行先をいくら考えていてもその想いが実現することはありません。
まして何もできずに国庫に帰属してしまうのは嫌だと思う方も多いのではないでしょうか。
しかし遺言書を作らないという事は、そうなってしまう可能性が非常に高い、という事でもあります。
交流のない相続人に財産が渡ったり国庫に帰属してしまうより、事実婚のパートナーやお世話になった方、応援する団体に遺産を渡したいという希望を持つ方もいらっしゃいます。
その様な方は希望を書いた遺言書を作っておけば、遺言書の内容に従って遺産分割されることになります。
相続人に財産を残すのはもちろんですが、たとえば財産を遺したい相手が相続人でなくても遺言書に書き残しておけば「遺贈」することができます。
逆に言うと、相続人以外の人や団体に遺産を遺すには、遺言書を作る必要があるという事でもあります。
自分が思った通りに財産を遺したいと考えているのでしたら、遺言書を作るべきなのです。
おひとりさまが遺言書を作るとき気を付けたいのは、遺言書の中で遺言執行者を指定する、という事です。
遺言執行者とは、遺言の内容を遂行してくれる人の事。
せっかく遺言書を作っても、誰にも見つからなければ遺言の内容は実現されません。
自分にもしものことがあったら、必ず遺言執行者に連絡が行くようにして、確実に遺言を実行してもらうようにしておかなくてはいけません。
また遺言執行者には遺言書の内容を実現するための強い権限が与えられるのですが、相続に関する知識も求められますし、遺言書の内容を遂行するための時間も必要になります。
身近に信頼できる方がいればお願いすることも出来ますが、もし身近にいない・迷惑を掛けたくないということであれば行政書士などの専門家に依頼することも出来ます。
おひとりさまに遺言書が必要な理由、お分かりいただけたでしょうか。
頑張って作り上げたご自身の財産、国庫に帰属してしまうくらいなら自分の思った通りに残したいですよね。
これを機に、ご自身のための遺言書を検討してみてください。